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最高裁判所第三小法廷 昭和43年(あ)94号 決定 1969年7月08日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人上口利男の上告趣意は、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない(盗犯等の防止及び処分に関する法律三条にいう三回以上の懲役刑につき刑法五六条の要件の存在は必要でないとした原判決の判断は、正当である。)。

また、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。(関根小郷 田中二郎 下村三郎 松本正雄 飯村義美)

弁護人の上告趣意

原判決は、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する。

一、本件第一審判決は、被告人の行為に対し常習累犯窃盗として盗犯等の防止及び処分に関する法律第三条を適用しているが、同条の常習累犯窃盗は、常習犯と累犯とを組み合わせたもので、常習累犯窃盗罪として処断するためには、常習性のほかに累犯としての要件が備わつていなければならないのである。

しかして、ここにいう累犯は、刑法第五六条、以下の累犯とその意を異にするものではない。ただ刑法第五六条以下の累犯の規定は、「懲役に処せられた者その執行を終りまたは執行の免除があつた日から五年内に更に罪を犯し有期懲役に処せられる場合」であり、盗犯等の防止及処分に関する法律第三条は「其の行為前一〇年内に三回以上六月の懲役以上の刑の執行を受け又は執行の免除を得たるもの」とされ、前者は五年以内、後者は一〇年以内に三回以上六月の懲役以上と言う点が相違するだけで、両者とも「刑の執行を受け又は執行の免除を得た」との概念は全く同一である。

しかして、刑法第五六条以下の累犯について、三個の懲役刑が順次ひき続き各執行を受けてそれが終了した場合、三犯として同法五九条の適用がないことは判例上明らかである。(最高裁昭和二七年四月一〇日判決、刑集六、四、六五三頁)

このことからすれば、盗犯等の防止及び処分に関する法律第三条においても、三個の懲役刑が順次ひき続き各執行を受け、それが終了した場合、同条の「三回以上刑の執行を受け終つたもの」には該当しない。

右のことは、刑の執行を受け出所したが、その効果なく、刑務所と社会の往復を繰り返しているような者を重く処罰しようとしている盗犯等防止及び処分に関する法律第三条の法意から充分うかがわれる。

ところで、本件の被告人は、窃盗前科が三犯あり、そのいずれも一〇年以内に刑の執行を受け終つたことは明らかであるが、右三犯のうちの一、二犯はいずれも刑の執行猶予を受けており三犯目の実刑判決の結果、一、二犯の執行猶予が取り消され、一、二、三犯につき、順次ひき続き刑の執行を受けたものであることは、前科調書の記載から明らかである。

したがつて、上記観点からすれば、本件被告人の場合、前記法律第三条の「三回以上刑の執行を受けたもの」に該当しないのである。

しかるに、第一審判決が被告人に対し、常習累犯窃盗として同条を適用したのは法令の解釈適用を誤つたもので、第一審判決に法令適用の誤りがないとした原判決は、盗犯等防止及び処分に関する法律第三条の解釈を誤つた違法があり、右の違法は、被告人の科刑に影響を及ぼすものであるから原判決ならびに第一審判決は破棄せるべきである。

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